【SNS採用の成功事例 Vol.2】就職したらどう森みたいな職場だった件について。

こんにちは!中小企業診断士の西村星彌(合同会社CLEMA)です。
前回は、あの家具・インテリアの巨人「ニトリ」が、SNS採用という新たな舞台でいかに若者の心を掴んでいるか、その巧みなSNS採用戦略についてお話しさせていただきました。(Vol.1の記事はこちら)
「お、ねだん以上。」のキャッチコピーで知られるニトリが、採用の世界でも「お、想像以上。」の成果を上げている様に、多くのご担当者様が驚きと共に、新たな可能性を感じていただけたのではないでしょうか。
そして本日、Vol.2として皆様にご紹介するのは、また一味違った、しかし同様に示唆に富んだ成功事例でございます。
舞台は、華やかさと同時に、厳しい競争や人間関係が囁かれることもある「美容クリニック」。
その採用アカウントが、なんと「就職したらどう森みたいな職場だった件について。」という、一度聞いたら忘れられない名前で、多くの求職者の心を鷲掴みにしているのです。
▶ 就職したらどう森みたいな職場だった件について。(TikTokアカウント)
「どう森」とは、言わずと知れた任天堂の人気ゲーム「どうぶつの森」の略称。スローライフを楽しみ、どうぶつたちと穏やかな日々を過ごす、あの優しい世界観でございます。
美容クリニックと、どうぶつの森。
一見、水と油のように思えるこの組み合わせが、なぜこれほどまでに求職者を惹きつけるのでしょうか。
本日は、このアカウントが持つ「人を惹きつける引力」の正体を、3つの視点から紐解いてまいりたいと思います。
Contents
「言語化できない不安」を「誰もが知る比喩」で払拭する力
求職者が、特に若い世代が企業を選ぶ際、給与や福利厚生といった「スペック情報」と同じくらい、あるいはそれ以上に重視するものがございます。
それは、求人票や採用ページの文字だけでは決して伝わらない「職場の空気感」でございます。
「人間関係は良好だろうか」「理不尽な上下関係はないだろうか」「心穏やかに働ける場所だろうか」
こうした漠然とした、しかし非常に根深い不安に対し、多く企業は「アットホームな職場です」「風通しの良い社風です」といった言葉で応えようといたします。しかし残念ながら、これらの言葉はあまりに使い古され、もはや求職者の心には響きにくくなっているのが現実でございます。
ここで、件のアカウントが行ったことは、まさにコロンブスの卵でございました。
彼らは「アットホーム」という言葉の代わりに、「どうぶつの森」という、誰もが知る共通言語を持ち出したのです。
この一言が持つ力は絶大です。
「どうぶつの森」と聞いただけで、私たちの脳裏には、「穏やか」「平和」「優しい世界」「スローライフ」といったイメージが、瞬時に、そして具体的に立ち上がります。
彼らは「私たちの職場は、あの“どう森”みたいな場所なんですよ」と、巧みな比喩を用いることで、求職者が抱える「言語化できない不安」に対し、「誰もが知る安心感」という最高の処方箋を提示してみせたのです。
「完璧な広報動画」ではなく「不完全な日常」を見せる勇気
アカウントの動画をいくつかご覧いただくと、あることに気づかれるかと存じます。
そこに映っているのは、プロの役者が演じるキラキラとした美容ナースの姿ではございません。(実際はプロを雇っているかもしれませんが…)
スタッフの方が他愛のない内容で談笑する様子、業務の合間に見せる何気ない表情、少し気の抜けたオフショット。
映し出されるのは、どこにでもある、ごく自然な職場の「日常の断片」でございます。
これは、非常に勇気のいる選択です。
多くの企業が「自社の良いところを見せたい」と考えるあまり、作り込まれた完璧な広-報動画を制作しがちです。しかし、デジタルネイティブである今の若者は、そうした「作られたコンテンツ」に極めて敏感でございます。
彼らが求めているのは、企業の「公式見解」ではなく、そこで働く人々の「素顔」なのです。
このアカウントは、完璧に見せることを潔く捨てました。その代わりに、少し不完全かもしれないけれど、嘘のない日常をそのまま見せることを選びました。
その「勇気」こそが、視聴者に「この人たちは、本当に仲がいいんだな」「この空気感は、本物だ」という、何よりも強い信頼感を抱かせることに成功しているのです。
「採用」の匂いを消し、「物語」の匂いを漂わせる
最後にもう一点、このアカウントの特筆すべきは、その絶妙な「距離感」でございます。
アカウント名しかり、動画の内容しかり、どこにも「求人募集中!」「ご応募はこちら!」といった、直接的な採用文句が見当たりません。
彼らは、採用アカウントであることを声高に叫ぶのではなく、あくまで「私たちの“どう森”みたいな日常を、少しだけお見せしますね」というスタントを貫いているのです。
これにより、視聴者は「広告」としてではなく、一つの「物語」として、このアカウントを消費することができます。
「今日はどんなほのぼのした出来事があったのかな?」と、まるで好きなドラマの続きを待つかのように、次の投稿を心待ちにする。
そうして、知らず知らずのうちに、この「どう森」の世界観に魅了され、登場人物であるスタッフの方々に親近感を抱き、気づけば「私も、この物語の一員になりたい」と、自然な形で応募への扉を開いてしまう。
これこそ、SNS時代における最もスマートで、かつ効果的な採用ブランディングの形ではないでしょうか。
まとめ:「何を言うか」より「どう感じさせるか」
今回ご紹介した「就職したらどう森みたいな職場だった件について。」というアカウントは、私たちにSNS採用における重要な示唆を与えてくれます。
それは、求職者に対して「自社の魅力は何か」を一方的に語るのではなく、「自社で働いたら、どんな気持ちになるか」を、いかに巧みに感じさせることができるか、という視点でございます。
彼らは「どうぶつの森」という魔法の言葉を使い、求職者の心に「安心」と「希望」という温かい感情の種を植え付けました。
皆様の会社には、皆様だけの「魔法の言葉」が眠っているはずでございます。
それは、誰もが知るゲームの名前かもしれませんし、あるいは、社内だけで通じるユニークな合言葉かもしれません。
ぜひ一度、自社の魅力をスペックで語ることをやめ、「私たちの職場を、何かに例えるとしたら?」という問いを、チームで話し合ってみてはいかがでしょうか。
そこに、まだ見ぬ求職者の心を動かす、新たな採用戦略のヒントが隠されているかもしれません。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
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